今週から地元で大きな映画祭『Seattle International Film Festival』が開幕し、さっそく一作品観てきました!

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観てきたのは、2012年のアイスランド映画『ザ・ディープ(The Deep)』。ジェガーさんの知り合いが「おすすめやで」と言って、チケットまでくれたので、それにあやかって行って来たのです。

私はアイスランド映画を観るのはこれが初めてかもしれません。この作品は、アイスランドのアカデミー賞と言われる Edda 賞で最多11部門を受賞。今年のアカデミー賞外国語映画賞にアイスランド代表作として出品されました。 1984年3月に、アイスランド沖で実際に起こった海難事故。極寒の海に放り出された漁船乗組員6人が一人ずつ意識を失って海の中へ沈んでいく中、若手漁師の一人グリ(Gulli)はなんと、泳いで岸を目指します。

この手の作品というと、たいていグリが助かって感動的に幕を閉じるというあらすじを想定しがちですが、この作品はそこで終わりません。そこが一番衝撃的でした。「もう終わりやな」と思ったところで終わらないのです。あろうことかジェガーさんは「もう終わり」と思って気が抜けてしまったらしく、そこで寝てしまったらしいのですが(映画が始ったのは夜9時でした・・・)、最後まで観た私は、監督が映画に込めた真意を読み取ることができました。

EW のインタビュー記事『Iceland's Oscar entry 'The Deep' director on filming shipwreck, working with Mark Wahlberg』(2012年11月)でバルタザール・コルマウクル(Baltasar Kormákur)監督が、まさに私の感じたことを言葉にして語っています。
I didn’t want to Hollywood-ize it too much. I wanted to not make a documentary, but be poetic.

(あまりハリウッドっぽくしたくありませんでした。ドキュメンタリー映画を作るのではなく、詩的にしたいと思いました。)

via Iceland's Oscar entry 'The Deep' director on the movie, Mark Wahlberg | Inside Movies | EW.com
私が想定していた「グリが助かって感動的に幕を閉じる」というのは、まさにハリウッドらしい終わり方だと思います。観た人はグリの生命力に心打たれ、「ああ、良い映画やった」と思いながら満足して映画館を去るかもしれませんが、きっとそこで終わり。「感動した」「泣いた」というありきたりの言葉で片づけられ、すぐに忘れられていく様子が思い浮かびます。「感動の消費」です。

バルタザール・コルマウクル監督は、そういう映画を "emotional porno" と呼んでいます。
We didn’t want it to be ‘emotional porno,’ how we call it in our country: fictionalizing, making it over-the-top.

(話を小説化し、大げさに仕立てるようなものを私の国では「感情ポルノ」と呼んでいるんですけど、そういう映画にはしたくなかったんです。)

via Iceland's Oscar entry 'The Deep' director on the movie, Mark Wahlberg | Inside Movies | EW.com
映画はあくまでグリの視点に寄り添い続け、グリを特別視する周囲の人々とグリの内面のギャップを浮き彫りにしていきます。

グリの内面描写の中には、1973年にアイスランドのウエストマン諸島(Westman Islands)にあるヘイマエイ(Heimaey)島で起きた火山噴火の様子も出てきます。氷河や火山に囲まれたアイスランドでは、自然の脅威は非常に身近で、自然災害や事故が国民にとって決して他人事ではないことを感じさせます。
“In my country, 80 percent of people live by the sea. It’s a very dear story to Icelandic people. It happened in 1984, when I was 18 years old,” Kormákur says.

(私の国では、国民の8割が海の側に住んでいます。これはアイスランド人にとって非常に大切な物語なのです。事件が起きた1984年当時、私は18歳でした。)

via Iceland's Oscar entry 'The Deep' director on the movie, Mark Wahlberg | Inside Movies | EW.com
だからこそ監督はグリの物語を「感動した」で終わらせたくなかったのかもしれません。 Icelandic ocean

(I, Akigka [GFDL, CC-BY-SA-3.0/) or CC-BY-SA-2.5-2.0-1.0], via Wikimedia Commons

というわけで、一本目から非常に骨太の作品を堪能することができました。ジェガーさんが途中で寝たというのが信じられません。

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