『アメリカで働く日本人エンジニアが陥りやすい落とし穴』講演会参加レポート

先日、『「It was nice to meet you」と「It was nice meeting you」はどっちが正しい?』という記事で、久しぶりにネットワーキングイベントに行ったことを書きましたが、またまた縁があって、今度は『SIJP(Seattle IT Japanese Professionals)』という団体が企画する講演会へ行ってきました。



私のいるところには、Microsoft 社や Amazon.com 社、Nintendo USA 社など、名だたる企業の本社が集まっています。『Seattle IT Japanese Professionals』は、そういった企業で IT 関係の仕事に携わっている日本人の方々が、ネットワーキングや交流を軸に活動している団体です。

私は IT 関係ではないのですが、講演会の告知を見たところ、

学生さんでも日本から来たばかりの方でもIT業界15年以上のベテランさんでも、ITに関連または興味されあればだれでも参加可能です。

via Seattle IT Japanese Professionals 講演会及び交流会 | Eventbrite

と書いてあったので、”アメリカで IT 関係の仕事に携わっている日本人の方々に興味のあるブロガー” として参加してきました。

今回の講演のお題は『アメリカで働く日本人エンジニアが陥りやすい落とし穴』。
Seattle IT Japanese Professionals

【講演概要】
どうしても日本とアメリカとでは仕事環境にも違いがあります。仕事で結果を出しているのに評価されない、認められない、上司との関係をどう築けばよいか分からない。アメリカでエンジニアとして働くみなさんも一度は経験、悩んだことがある方も多いのではないでしょうか。この講演会では、アメリカの会社で働く上で日本人が陥りやすいポイントを上げ、どうしたら上司に認められ、成功をしていけるかのお話、ディスカッションをします。

via Seattle IT Japanese Professionals 講演会及び交流会 | Eventbrite

講演者は、米マイクロソフト本社 Operating System Group (OSG) のプリンシパルマネジャーを務める鷹松弘章さん。1994年からロータス株式会社(現 IBM)の製品開発分野を歴任した後、マイクロソフト株式会社(現日本マイクロソフト)を経て2001年に Microsoft Corporation に入社され、Windows Media CenterWindows Media Player、Windows Vista、Windows 7 のリリースを手掛けて現職に就いていらっしゃいます。

管理職から見たエンジニア、という立場でお話をされましたが、IT 系以外の職種にとってもためになる話がてんこ盛りでした。

まず、最初に参加者の在米歴が尋ねられたのですが、ほとんどの人は在米5年以下。鷹松さんによると、日本人のエンジニアがアメリカに5年以上いることは稀だそうです。「自分のやり方を曲げない人、こだわりが強い人、上司との出会いよりも技術を求める人は、帰国する傾向が高いです」と鷹松さん。「面白い技術というのは、自分次第でどこでも見つけられますが、尊敬できる上司というのは、なかなか巡り会えません。出会ったら、もう離さない。」

アメリカの企業では自己主張をすることが大切だとよく言われますが、やはりマネジャーである鷹松さんの視点から見ても、日本人と比べて他の人種の方が昇進(promotion)やボーナスのことなど、臆さずに聞いてくるそうです。「米マイクロソフトでは、1対1でマネジャーと話をする機会を定期的に設けていますが、自分の状況をただアップデートするのではなく、パフォーマンスを中心に話すことが大切です。」

その中で特に大事なのが、フィードバックを求めること。マネジャーは基本的に、フィードバックを聞かれない限りは自ら伝えないそうです。マネジャーにとっても、フィードバックを伝えることは人間関係のリスクなどを伴うことがあるからです。「フィードバックを聞けるか聞けないかで、その人の成長は大きく変わります。フィードバックが聞ける人の方が、エンジニアとしては伸びます。」

ただし、アメリカのマネジャーは子育てなどに積極的に参加している人も多く、時間に敏感な人が多いので、手当たり次第に話を聞くのは逆効果になる危険性もあります。話を聞く時は、スケジュールをきちんととって聞く。そして、自分のことを話す時は、しっかり自分自身をプレゼンテーションする。最後はフィードバックを求めて、真摯に耳を傾ける。それをまた自分のパフォーマンスにつなげて、伸ばしていく。私自身は自分のプレゼンテーションが下手で、ネガティブなフィードバックを聞くとどーんと落ち込んでしまうことが多いので、そこはもっと鍛えなくちゃいけないなと思いました。

一方、マネジャーに関する話もありました。アメリカで成功しているマネジャーは、良い意味で頑固で、意見は聞くけれども筋をしっかり通す人たちが多いそうです。「絶対的な強さと、個人的な優しさを持ち合わせることが、良いリーダーシップには欠かせません」と鷹松さん。この点に関しても、私は今仕事で留学生と関わることが多いのですが、彼らの意見にしっかり耳を傾けつつ、言いなりになって振り回されない強さを持つことは大切だと噛みしめました。聞く力と、影響する力のバランスが肝要だそうです。

本当に、エンジニアではない私にとっても、ものすごく勉強になる内容でした。参加者からの質問もたくさん出て、アメリカ企業で働く日本人エンジニア、アメリカ企業でマネジャーを務める日本人、IT 企業への就職に興味のある日本人学生など、いろいろな人の意見や考えが伺えて興味深かったです。

何より嬉しかったのは、アメリカの企業に勤めてがんばっている日本人の方々にたくさん出会えたこと。アメリカで仕事をするのは、やっぱりいろいろ苦労します。言語の問題、文化の問題、国民性の問題など、日本で仕事をする時にはあまりぶつからない問題に、たくさん遭遇します。日本人同士だからこそ起こる問題にはあまり遭遇しない、という面もありますが、どこの国でも関係なく遭遇する問題というのも、もちろんあります。

そういうことをみんな肌では感じていると思うのですが、こうした講演会を通して自分の遭遇する問題を言語化し、頭で理解して、お互いにモチベーションアップを目指していくというのは、本当に素晴らしい取り組みだと思いました。元気が出ました。

毎月第3金曜に活動しているそうなので、私もぜひ継続的に参加したいと思います。

・・・と思ったら、なんと私も活動メンバーに加えていただけることになりました!

「今日のこの講演会のことを、ブログで紹介しても良いでしょうか?」と聞いていたら、「団体の公式ブログの方もお願いできますか?」という話になり、「書くの大好きなので、ぜひぜひ!」と言ったら、メンバーに入れていただきました!

本当、書くのが大好きで良かったです。こんな素敵な方々と、出会えただけでも大興奮なのに、一緒に活動できるなんて・・・!

今後の活動の話を伺っていても、すごく面白そうだったので、またこのブログでも報告していきたいと思います!