ジェガーさんの書いた記事で何度も目にした「protagonist」の意味とは?

ジェガーさんは映画の他にゲームも大好きなのですが、先日、ジェガーさんの書いたゲームに関する記事がアトランティック誌(The Atlantic)に掲載されました。

Tomb Raider

これはもともと、テレビゲーム業界におけるローリングストーンRolling Stone)誌的な『キル・スクリーン(Kill Screen)』という雑誌に掲載された記事で、それがキル・スクリーンと提携を結んでいるアトランティック誌にも掲載されたというわけです。

けっこう長い記事なのですが、ジェガーさんが書いた記事ということで、私も読んでみました。すると、”protagonist” という単語を何度も目にしました。

By leaving protagonists’ preferences open to interpretation, video games like Assassin’s Creed and Tomb Raider have been including characters not defined by gender or sexuality.

via How Video Games Are Slowly, Quietly Introducing LGBT Heroes – Jagger Gravning – The Atlantic

Look at how film handled something that was impossible to present to the audience in a similarly subliminal way: non-white protagonists.

via How Video Games Are Slowly, Quietly Introducing LGBT Heroes – Jagger Gravning – The Atlantic

ポイント

“protagonist” はこの場合、「主人公」という意味で使われています。

protagonist | Macmillan Dictionary

  1. the main character in a play, movie, book, or story
  2. someone who tries to make something such as a new idea or policy popular
  3. one of the main people or groups involved in an argument, battle, or competition

(2. は新しいアイデアや政策などを広めようとする人、そして 3. は議論や争い、競争において最も中心にいる人あるいはグループの一人、という意味なんですね。)

つまり一文目は「主人公の性的嗜好を解釈自由にすることで、『アサシン クリード』や『トゥームレイダー』のようなゲームは、性別や性的興味によって定義されない登場人物を取り入れてきた」、そして二文目は「同じように控えめに描写するのは不可能なものを、映画がどう扱ってきたかご覧いただきたい。有色人種のことだ」と書かれていたのでした。

補足

というわけで、一体ジェガーさんがどんな記事を書いたのか、詳しく見ていきたいと思います。ゲームも好きですが、やっぱり映画も好きということで、まずは映画業界の話から始まっています。

映画が大きく進化したのは、無声映画に音が加わった頃でしたが、映画業界には同時期にいわゆる『The Hays Code』というものが導入されました。

Named after the censor and Republican National Committee chairperson Will Hays, the Code was intended to stop film’s ability to display girl-on-girl kissing, fervent voyeurism of the young female body, and successful gangland crime, among other things. The Supreme Court-approved censorship laws prohibited the distribution of films with such content or forced them into costly re-edits.

(これは検閲官であり共和党全国委員会会長であったウィル・ヘイズにちなんで名づけられたコードで、映画で女性同士がキスをしたり、若い女性の体を熱心に隠し撮りしたり、裏社会の犯罪の成功を描いたり、といったことを規制するものだった。最高裁判所はこれらの内容を含む映画の配給を禁止したり、コストをかけて再編集させたりする検閲法を可決した。)

via How Video Games Are Slowly, Quietly Introducing LGBT Heroes – Jagger Gravning – The Atlantic

その後、Motion Picture Association of America(MPAA)によるレーティング制度が登場するまでの間、フィルムメーカー達はあからさまな同性愛表現を謹んでいたそうです。

たとえば、アルフレッド・ヒッチコック(Alfred Hitchcock)監督の映画『ロープ(Rope)』(1948)の主人公は同性愛者であり、そのことは脚本家のアーサー・ローレンツが短編ドキュメンタリー『Rope Unleashed』で明らかにしていますが、映画では全く触れられていません。
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一方、Entertainment Software Rating Board(ESRB) によるレーティング制度はあってもヘイズ・コードのような検閲システムはないゲーム業界においても、登場人物の性的マイノリティの描写については、映画業界と同様目立たないように描かれてきたようです。

たとえば、ゲーム『トゥームレイダーTomb Raider)』の主人公、ララ。
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あるいは、ゲーム『アサシン クリードIII レディ リバティAssassin’s Creed: Liberation)』の女性暗殺者アヴリーン。
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記事では、その根拠を示す例があれこれ挙げられていますが、どちらも同性愛者であると仮定すると、ゲームの辻褄がいろいろと合うそうです。

『トゥームレイダー』のストーリーを手がけたリアーナ・プラットチェット(Rhianna Pratchett @rhipratchett)さん自身、主人公ララが同性愛者であることを示す発言をしているそう。ただ、あくまでそういった描写はさりげなくて、同性愛に抵抗のある人にも美的に親しみやすいようになっているとのこと。

From a certain point of view, there is something elegant in handling LGBT characters in this indirect way. There is certainly relief in escaping the expositional mire game writers often confuse for storytelling. And because the focus of the story is forced to be about something else, these LGBT characters are not defined only by their orientation.

(ある観点からすれば、性的マイノリティのキャラクターをこのように間接的に扱うことには、何か上品な美しさがある。ゲームの脚本家たちがストーリーを伝える上で混同しがちな “状況説明に陥る泥沼” から逃れる安心感も確かにある。さらに、物語の焦点がどこか別のところにあるおかげで、これらの性的マイノリティのキャラクターたちは、その性的嗜好によって定義されることがない。)

via How Video Games Are Slowly, Quietly Introducing LGBT Heroes – Jagger Gravning – The Atlantic

現段階では、不明瞭なバックグラウンドを持つ性的マイノリティのキャラクターを取り入れることで、意図せずゲームのストーリーにより奥行きを与えている可能性がある、とジェガーさん。性的マイノリティという要素が主に主人公に取り入れられていることについては、前述のリアーナさんがこう語っています。

“Getting those representations into games is the first step. Once we’re more comfortable with that, actually speaking to those issues a little more broadly will be possible.”

(ゲームにこういった表現を取り入れるのは、まだ初期の段階。もう少し慣れてきたら、これらの問題についてもう少し広げて語れるようになると思う。)

via How Video Games Are Slowly, Quietly Introducing LGBT Heroes – Jagger Gravning – The Atlantic

ジェガーさんが普段ゲームをしているのは、私がブログを書いている時だったりもするのですが、ただ趣味に興じているだけかと思いきや、こんなことを考えながらゲームをしていたなんて知りませんでした。

ちなみに、この記事にはイイネが980もついています(羨)